3.大腸ポリープの癌化【大腸癌(がん)】

腺腫が「癌」になる可能性

大腸腺腫が癌になる可能性は、どれくらいあるのでしょうか?
以前は、「腺腫はすべて前癌状態である」、つまり、癌になる一歩手前の状態であると考えられていました。 しかし現在では、癌になるのは腺腫のほんの一部であることがわかってきました。どのような腺腫が癌になるのでしょうか? ここでポイントになるのが、腺腫の大きさです。腺腫の直径が5mm を超えると一部癌化したものが出てきます。さらに10mmを超えると急激に癌を含む可能性が高くなってくるのです。 また腺腫は、ある期間同じ大きさにとどまり、ある時期から大きくなり始め、またその大きさにとどまるというように段階的に増大していき、一直線に大きくなることはないようです。


【大腸進行癌(がん)の写真】


その理由はよくわかっていませんが、遺伝子の変異とも関係しているのではないかと考えられています。 よく知られているように、癌は癌遺伝子や癌抑制遺伝子など、複数の遺伝子の異常が積み重なって起る病気です。遺伝子が傷ついて変異を起こすにつれて、 正常の組織から腺腫、さらに癌へと進展していくと考えられています。おそらく、腺腫の段階的な増大も、こうした遺伝子の変異と大きく関係しているのではないかと 思われるのです。つまり、ひとつの遺伝子が傷つくと増大のスピードが増し、また次の遺伝子が傷つくと次の増大が起るという具合です。 しかし、将来的にどういう腺腫が大きくなっていくのかを、小さいうちから判断することは困難です。わかっているのは、5mm以上の大きさになると、 増大するにつれ癌を含む可能性が次第に高くなるということです。

「癌」か「腺腫」か?

では「癌」と「腺腫」はどのように見分けるのでしょうか?専門家が癌と診断する時には、ポリープの組織や細胞の形が正常の組織や細胞とどのくらい違うかを判断の基準としています。 これを「異型度(いけいど)」といいます。実際には、内視鏡などでとってきた組織の断片を顕微鏡で観察(病理検査)し、その形から診断を下すわけです。これを「病理診断」といいます。 正常な組織では細胞はみな同じような形をしており、一定の秩序に従って整然と並んでいます。ところが癌になると勝手気ままに細胞が増殖していくために細胞の核が大きくなり、 並び方の秩序がなくなります。実際には正常な組織と癌ははっきりと2つに分けられるものではありません。両者の間にはいくつかの変化の段階があります。 腺腫もその中間段階に含まれています。正常の組織とどれだけ違っているかによって軽度異型、中等度異型、高度異型という段階に分類します。 異型度が強くなるほど癌に近い状態ということになります。正式には検査された組織は、正常から癌まで、5つのグループに分類されます。

グループ1 : 正常もしくは炎症性変化
グループ2 : 炎症性の変化がある
グループ3 : 腺腫性で軽度、または中等度の異型=腺腫
グループ4 : 腺腫性で高度の異型または癌を疑うもの=腺腫と癌の一部
グループ5 : 明らかな癌
(大腸癌(がん)取り扱い規約より改変)

グループ1)であれば心配なし、グループ5)であれば癌、その中間に位置するのが腺腫です。腺腫は異型度が強いほど、より癌に近くなり、また癌になる 可能性も高いと考えられています。腺腫は大きくなるほど異型度が強くなる傾向があります。

摘出が必要なポリープとは?

以前は、腺腫は前癌状態であるとみなし、すべての腺腫が発見され次第、摘出されていました。しかし、現在では腺腫でも、癌化の危険度の高いものにし ぼって選択的に摘出するという考えに変わってきています。そこで、日本では5mm以上の大きさのポリープが摘出の対象とされています。 5mm未満のポリープは経過観察でよいと考えられていますが、科学的な根拠はありません。したがって、平坦型で陥凹のあるものや、形がいびつであるなど特殊なタイプのものは、 5mm未満でも発見され次第、摘出されます。一方で、発見したポリープは全て摘除するという考え方もあります。理由は発見したポリープが 「癌になる、ならない」ということのみならず、「小さなポ リープをすべて


【拡大内視鏡の写真】


取り除いた後は大腸内視鏡を毎年受けなくてもよいのではないか」という考え方に基づいています。 最近では拡大内視鏡が次第に普及してきています。これは内視鏡の先端に顕微鏡を備えているものでポリープの表面の模様をパターン分類し病理組織並みの診断を試みるもので、 特に内視鏡的ポリープ切除術の適応決定などに役立っています。

ポリープと無関係な「癌」

ところで、大腸癌(がん)は本当にポリープにさえ注意していればいいのでしょうか?確かに、以前はすべての大腸癌(がん)は、ポリープの形から始まるとされていました。 しかし、現在ではこの考え方は否定されています。ポリープから発生しない癌、隆起にならずに平坦なまま、癌化することがわかってきたのです。 こうした平坦な癌は、「デノボ癌」と呼ばれています。これは、おそらく遺伝子変異の順番の違いからくるのではないかとする説が現在では有力です。
 大腸癌(がん)はポリープだけから発生するものではないこと、そして意外にデノボ癌は多いのではないか、と最近は言われています。また、こうした遺伝子異常 の筋道が解明されることで、 将来的には細胞や組織の形で癌の診断(病理診断)をするだけではなく、遺伝子から精密に、癌の診断が可能になるのではないかと期待されています。